仙崎のブランド魚 ダルマ(メダイ)について


 

メダイと聞いてキンメダイの仲間と思われる方もいるのではないですか。すぐにメダイのスタイルをイメージできる人は多くはないはずです。

タイと名が付きますがメダイは一般的に想像される鯛(真鯛)とは似ても似つかぬ姿。それもそのはずです、メダイは真鯛と異なるイボダイ科の魚でございます。特徴的なのはギョロっとした目。それで「目鯛」と名付けられたのかもしれません。そのほかの印象としては丸々とした愛嬌のある魚体で赤色ではないのですけど、山口県や島根県では「ダルマ」と呼ばれています。この呼称に馴染があるので、ここではダルマで統一しましょう。

日本海側のダルマはその生態についてはあまり知られていませんでした。日本海沿岸域では平成9年頃より漁獲量が増加に転じ、日本海側のダルマは満1歳で約34cm、2歳で46cmに成長し、3歳でおよそ56cmになることが分かっています。

仙崎に水揚げされるダルマは主に沖建網によって獲られ、この時期であればおよそ水深80~130m付近を探ります。ダルマは生態的に高水温を嫌うみたいなのです。だいたい年間を通じて21度以下の水温域に分布するといわてますから、クールな環境を好む魚なんですね。ダルマは海底の天然漁礁や人工礁付近で暮らしています。ということは、ダルマ漁の網を水深100m付近に落とさなきゃならぬわけです。魚群探知機、潮流計を睨みながら、船長がどの位置から網入れを決めるかが腕の差であると語ってくれたのは漁協の担当者さん。潮流れというものは表層と低層で向きが異なるし、速度も変わるって知っていましたか?これに風向きの計算もあります。umisachiはこの話を聞いた瞬間、船長とは数学者であり哲学者であると確信しました。

それでは、ダルマの旬っていつでしょう。日本海側のダルマは10月から3月にかけて産卵時期を迎えるといわれてます。俗に食べて美味しいと味覚が判断する基準は含有脂肪量の数値で、これが増えてくるのは7月から10月であることが分かりました。 この期間の脂肪量は20%を超えていますから、旬は夏から秋といえるでしょう。20%という脂肪量はかなり高い部類ですよ。11月から産卵時期のダルマは若干落ちるといっても12%近い脂肪量がありますので、刺身で食べるのならこの時期がよいと云う方が多いのも頷けます。

表現はよくないですが、グロテスクな魚の方が食べてみるとずっと美味しかったりします。ダルマもその類に漏れず、まったくもって味わい深い魚。某コメンテーター風に表現すれば「ダルマはレシピの博覧会やぁ~」。失礼しました!ダルマによく似たイボダイ科の魚は太平洋、大西洋沿岸域でも釣れてます。これらは海外でも食べられていて、新鮮なものは主にカルパッチョ、切り身は”misoyaki”なんてレシピも見かけます。

さて、仙崎市場に水揚げされるダルマはどのくらいあるのでしょう。近年においては4年前の250トンを境に急激なカーブを描き減少に転じ、昨年度は20トンを割り込みました。島根県が調べた報告書によれば、日本海西南沿岸海域において、ダルマ幼魚の来遊量は平成21年以降著しく減少したとあり、来遊幼魚の採集量と漁獲量は経年後の相関関係が明らかとなっています。 特に平成22年から23年にかけてダルマ幼魚の採集がなかったことを考えると、昨年来の不漁はもうしばらく続くのではないかという見方もあって魚価に跳ね返りそう・・・。あまり高級魚になってしまうと弱っちゃうんだけど・・・。まことにおいしい魚なのでいろいろな食べ方が紹介されていますからいくつか拾ってみました。

メダイのポワレ

まず焼き物から。塩こしょうした切り身をオリーブオイルで焼き、さっと白ワインを振りかけて少々蒸したらふっくらと仕上がります。

 

 

 

メダイの照り焼き

これまた定番。みりん、酒、しょうゆが甘く溶け合ってメダイにぴったり。

 

 

 

メダイの煮もの

やっぱりメダイの味をしみ込ませた野菜といっしょに。大根が代表的な組み合わせですけど、おすすめは冬瓜。メダイの脂を吸った冬瓜は最高です。イメージ写真はウナギを使った料理ですが、夏の野菜であれば長門市でよく獲れる黒瓜にしてみてはいかがでしょうか。

 

 

メダイの焼き物カレー風味

海外のレシピサイトで見つけました。カレー粉と小麦粉を混ぜあわせて切り身にまぶし、こんがり焼いてからエシャロット、オリーブとトマトのオレンジソースをかけて召し上がる一品。最近ではいろいろ味付けされたスパイスが市販されていて、魚や肉にまぶすだけって商品がたくさん発売されてます。これらを上手に活用してみたいですね。手に入れば仕上げにコリアンダーかパクチーで香り付けし、エスニック風に仕上げてみてください。umisachiが翻訳してみたレシピを載せますから、どなたかお試しあれ!

作り方

① メダイの切り身に塩こしょうをふり馴染ませておく。
② エシャロット(なければ玉ねぎ)、オリーブの実はみじん切りにしておく。
③ トマトは1cm角にカットしておく。
④ カレー粉と小麦粉をよく混ぜ①の両面にまぶし、フライパンにサラダ油をひいたら中火で8分ほど焼き、両面が黄金色になったら取り出す。
⑤ 切り身を取り出したフライパンの表面さっと拭いたら油をひきなおし、エシャロットを炒める。
⑥ エシャロットに火が通ったところでオリーブ、トマトの順に加えて炒め、オレンジジュースを加えて温めたのちにコリアンダーを振りかける。
⑦ 器に④の切り身を置き、⑥を振りかけて出来上がり

材料:4人前

メダイの切り身 4枚
塩こしょう 少々
エシャロット 1個
オリーブの実 8粒
トマト中 1個

 

カレー粉 小さじ2
小麦粉 大さじ2
オレンジジュース 50cc
コリアンダー 小さじ2
サラダ油 少々

たくさん獲れるようになるといいですねえ! 

参考資料
森脇 晋平,寺門 弘悦,安木 茂,佐々木 正(2013年).沿岸漁業の複合的経営に関する研究-Ⅴ.島根県水産技術センタ-研究報告 5 13-18
白木 信彦(2011年).メダイの成分分析結果.山口県水産研究センターだより.2011(4) 4
河野 光久,繁永 裕司(2011年).山口県日本海沿岸域におけるメダイの年齢と成長.山口県水産研究センター研究報告 9 95-98
河野 光久,繁永 裕司(2011年).山口県日本海沿岸域におけるメダイの成熟および産卵.山口県水産研究センター研究報告 9 99-103
河野 光久,石田 祐司,繁永 裕司(2010年).山口県日本海沿岸域におけるメダイの分布.山口県水産研究センター研究報告 8 23-26
河野 光久(2009年).メダイ(だるま)釣りのすすめ.山口県水産研究センターだより.2009(2) 1-3

カテゴリー: ながとの漁師たち, イベント・新着情報, 魚のレシピ   パーマリンク

コメントは受け付けていません。