仙崎のアカミズ(キジハタ)について


キジハタという名前の魚をどれほどの方が知っているでしょうね。海辺の街、仙崎じゃ知らない人が少ないと思いますけど、頻繁に口にする魚ではありません。つまり「高級魚」の三文字がコピーにつくお魚ってこと。今日は夏場に漁獲の多いキジハタを紹介しましょう。

仙崎市場名はアカミズ。アコウと呼ぶ関係者も多いキジハタは北長門の岩礁に棲みつくハタ科の仲間です。オレンジに朱色の水玉をまとったカラフルな姿から想像できないほど美味なる白身のキジハタは、漁師さんだけでなく釣り人も垂涎のターゲット。ただし、高級魚の所以はキジハタの食味によるものだけじゃなく、その生態からまとまった漁獲量が見込めないことに起因しておりました。

仙崎市場を見学していると稀に見かける程度の魚ですが夏場の今は最盛期、この頃は毎日揚がっていますよ。活魚が若干多いかな。ハタ科の仲間は正確な漁獲統計資料がなく、全国レベルでの話ができなくて申し訳ないので、仙崎市場の漁獲量だけお知らせします。

平成20年 2.6トン
平成21年 2.4トン
平成22年 2.0トン
平成23年 2.9トン
平成24年 3.2トン

昨年度はようやく年間3トンに達しました。これは平成15年から山口県水産研究センターが取り組み始めた、キジハタの種苗生産と飼育放流事業が成果となって表れてきたためと思われます。といいますのも、水産研究センターが発表した長門市油谷湾での放流追跡調査(平成18-22年)を読めば一目瞭然、放流地点定着性の高いキジハタの姿を浮き彫りにしているのです。
南部 智秀(2011年).山口県のキジハタ栽培漁業へのチャレンジ.豊かな海 25 5-9

30cmに達するのに4年を要する魚。長門の岩礁地帯でゆっくりと育って、その後は回遊魚のような移動をほとんど行いません。

山口県も動き始めました。資源管理を官民一体となって進めようと、『30cm未満捕獲禁止』をポスターで告知活動スタート。山口県水産振興課による見積もりは推定年間10トンの県内漁獲量。産卵適正個体は全長28cm前後であるから30cmまでのキジハタを保護しようとするルールつくりです。報道発表はこちらをご覧ください。
これが適用されるのは今年の10月1日から。悪質なケースと認められた場合は漁業法により摘発されますからね、適用前に再度アナウンスしておきたいと思います。

さて、仙崎市場に水揚げされるキジハタはいろいろな漁法によって集められ、今月で言うと漁獲量の多い順からこうなります。

  • 磯建網
  • 一本釣
  • かご網
  • 延縄
  • 沖建網
  • 刺網
  • 吾智網

全体の6割が磯建と一本釣によって獲られていますね。これらはほぼ100%活魚水槽で活かしたままセリにかけられています。気になる市場価格ですけど、ひとむかしはキロ3000円を下らないと言われてましたが、現在では種苗放流の効果も手伝い価格がこなれてきました。およそ1500円から3000円の間で推移。それでもまだまだ食品スーパーの鮮魚コーナーで、パック売りされるような大衆魚じゃありません。
当ブログの例によりまして、お料理コーナーへと進みたい訳ですが、何せ食べたことが無い(汗)。聞けば高級料亭では刺身や煮物として振る舞われるそうですが、マダイのようにパイ包み焼とか、洋風にアレンジしたものはないのかなあ?この魚は日本近海と中国沿岸部の温暖な海域にしか分布していませんから、欧米のシェフは扱ったこともないでしょうけれど。皮のきれいな白身の魚だし、彼らに提供できれば素敵なレシピが生まれるかもしれませんね。

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